中堅化学メーカーの研究開発を経験し、営業部門に所属しているぴすけっち@chemistpisketchです。
私の価値観として、伸びている事業=自身も成長できる領域と考えています。どの産業でも必要不可欠な半導体での重要材料フォトレジストは改めて注目される領域です。
フォトレジストとは
TSMCがApple向けに5nmの量産を開始したといった記事をよく見かけます。〇nmは、半導体のチップに形成される配線の太さです。配線を微細化することで、スマホのCPU(AP)の性能が大幅にアップします。露光装置の性能に加え、材料であるフォトレジストも非常に重要です。
フォトレジストとは、シリコンウェーハ―等にスピンコート等で塗布し、露光・現像プロセスで微細な配線の型枠を形成する材料です。光反応する材料を感光性材料と呼び、光照射部が硬化し、未照射部を現像で取り除くネガ型と、照射部を現像液で取り除くポジ型があります。感光性材料はドライフィルム・ソルダーレジスト材のようにプリント配線板用途にも使われますが、フォトレジストは半導体のシリコンウェハ上に使う材料を指すのが一般的です。このようなウェハ―への加工を前工程と呼びます。
下記のように微細配線が形成されたウェハ―は個片化して一つのチップとなります。
フォトレジスト業界の仕事の特徴
感光性材料は原料の配合技術も重要ですが、フォトレジストはメインポリマーの性能が非常に重要です。今回紹介した企業は自社で設計可能な技術を有するメーカーがほとんどです。つまり、分子設計から研究開発に携わりたい学生さんにとっても重要な候補となるのではないでしょうか。
各社比較まとめ
今回紹介する5社は規模・売上ともにバラバラですが、最も規模の小さい東京応化工業の存在は非常に大きいです。国内企業がシェア9割を占めると推測されています。
東京応化工業
東京応化工業は従業員1,726名、売上高 1,175億円/営業利益95億円/営業利益率13.3%。今回紹介する中では小規模ですが、フォトレジストが有名な会社。製造装置まで手掛けています。
2019年12月期2020年12月期の営業利益を比較すると、92億円から156億円に大幅に伸びており、好調な様子がうかがえます。利益率は13.3%にまで上がりました。
フォトレジストの関連するエレクトロニクス機能材料事業が50%以上を占めています。IR情報はこちらです。
ピンポイントでフォトレジストに興味あれば、志望企業として有力に!
信越化学工業
信越化学工業株式会社 電子・機能材料事業 新機能材料事業部
従業員数22,782人 売上1兆5,435億円/営業利益4,060億円/営業利益率26.3%(2019年)
半導体シリコン・シリコーン事業などをもつ巨大かつ超優良企業。詳しくはこちらでも紹介しています。
フォトレジストが所属するのは電子・機能材料事業は2020年4月~9月1,096億円の売り上げに対して335億円の営業利益、営業利益率30%超えの優良事業分野の一員のようです。IRレポート中には次のような記載あり。
・フォトレジストはArFレジストやEUVレジストを中心に総じて好調でした。
有機材料の事業分野もあるということで、有機・無機の専門問わず幅広い学生にとって第一志望になり得る会社ですね。
JSR
JSR株式会社 デジタルソリューション事業
連結従業員 9,050名売上約4,720億円/営業利益320億円/営業利益7%(2020年3月期)
エラストマーや合成樹脂のイメージが強い会社ですが、2021年3月期 第3四半期決算短信を見ると、デジタルソリューション事業の構成比が最も高くなっています。該当事業内の他材が苦戦する中、半導体材料は好業績とのこと。エラストマーは苦戦中のようです。
研究開発能力に定評のある会社!デジタルソリューション事業中心に今後も新しい価値を生み出していくことでしょう!
住友化学
住友化学株式会社情報電子化学部門
従業員数 連結 33,586名 単体 6,214名
売上2兆2,225億円/営業利益1,376億円/営業利益率6.2%(2020年3月期)
総合化学メーカーとして有名な住友化学ですが、さすがの規模感ですね。
情報電子化学部門は石油化学・医薬品に次ぐ事業領域です。IR情報によると高純度ケミカル・ディスプレイ関連材料とともにフォトレジスト関連材料は出荷増とのこと。こちらもフォトレジストは好調ですね。
総合化学メーカーの一角!
住友化学について詳しくはこちら
富士フィルム
富士フイルム ヘルスケア&マテリアルズソリューションズ部門
従業員数 連結 33,032名 単体 4,702名富士フィルムホールディングス連結73,906名。
HD全体 売上2兆3,151億円/営業利益1,866億円/営業利益率8.1%(2020年3月期)
詳しくはこちらの記事でも紹介しています。
マテリアルズ領域の電子材料としてフォトレジストは位置づけられているようです。先端レジストは好調という記載がありました。
写真中心の会社から大きく生まれ変わり、フォトレジストまで手掛けているとは驚きですね。
さすが、新規事業創出でお手本とされている会社と感じますね!
フォトレジスト関連はグループ会社の富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社で開発・製造・販売を担っているようです。
最後に
いずれも大手企業ですが、超王手ともいえる企業群の中で東京応化工業の存在感があるというのも、化学企業ならではという印象をもっております。
日本には小粒だが世界と戦える化学メーカーが多数ありますので、そういった視点でも企業研究を進めていただけたらと思います。
こちらの記事で他の半導体素材も紹介しています。
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